ニュース概要
日本の大手製鉄会社は、脱炭素化を目指して鉄鉱石からの鉄抽出に水素を利用した試験を実施しています。
環境に優しい製鋼技術の確立を目指していますが、技術開発や大量生産の実現には高コストが伴い、実用化には高いハードルがあります。
現在の主流な製鋼方法は高温の高炉で鉄鉱石とコークスを使用するものですが、この過程で大量の二酸化炭素が排出され、製鉄業は日本の総CO2排出量の13%を占めています。
CO2排出を約75%削減できる電気炉への移行も進んでいますが、スクラップ鉄を原料とするため、不純物が混入し品質に影響を及ぼします。そのため、主要な製鉄会社は水素の利用に注目しています。
日本製鉄は、千葉で来年、水素を用いた還元反応を行い、CO2排出を43%削減する実績を上げました。しかし、水素使用による吸熱反応の問題もあり、加熱水素の注入システムを開発しました。
JFEスチールは、炭素循環高炉の研究を行い、CO2からメタンを生成するプロジェクトを推進しており、従来の高炉より50%以上のCO2削減を目指しています。
また、神戸製鋼所は水素を用いた直接還元工程を確立しましたが、高コストが導入の大きな障害となっています。市場の悪化に伴い、脱炭素化プロジェクトの投資が再考されています。
日本鉄鋼連盟はCO2削減方法の効果を評価するガイドラインを作成しましたが、政府の研究開発支援は十分とは言えません。市場の創出が投資回収において重要であると日本製鉄の会長は強調しています。
ポイント
- 日本の製鉄業界は、水素を利用した鉄の抽出のテストを開始し、脱炭素化を目指す。
- 高コストがCO2削減技術の導入を妨げており、投資が二の足を踏んでいる。
- 政府は水素鋼製造技術の研究開発に4499億円の補助金を用意しているが不足。
AIによる分析・解説
日本の鉄鋼業界は、脱炭素化への取り組みとして水素を用いた鉄の還元技術の開発を進めている。大手企業は各々独自の手法を模索しているが、開発コストが従来の二倍以上に達する見込みで、実用化には高いハードルが存在する。また、国内需要の縮小や中国の過剰生産が影を落としており、投資計画の見直しが進んでいる。こうした状況下で、今後の市場創出が投資回収に不可欠とされ、政府の支援策も十分とは言えない。水素を用いることで長期的なCO2削減が期待される一方、経済的な実現性をどう確保するかが、業界全体の持続可能性を左右する重要なポイントとなるだろう。

